
-第一章 髪切り-
【第一話】
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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
あくまでも作者の妄想が生み出した「葱太郎」によるフィクションとエンタメ、そして、
個人的な願望を好き勝手に盛り込んで作り上げた日常が舞台のお話です。
もしかしたら、知ったフリして平気で嘘付いている可能性もありますし、
到達しなかった人類の考えを遥かに超越した新たなる心理に触れるかも知れません。
が、何度も良いますが、この物語はフィクションです。大切なので二度言いました。

葱太郎:どうもこんにちは、葱太郎です。
今回お届けするお話は、江戸時代に町中を騒がしたと言われる
「髪切り事件」に纏わるお話です。

江戸時代の随筆『耳嚢』巻四「女の髪を喰う狐の事」には、
髪切りの被害があった場所で捕らえた狐の腹を裂くと、
大量の髪が詰まっていた、なんて話もありました。
それほどに江戸の町中を騒がしたこの騒動、一体どんなものだったのか
明治、昭和の世でも同様の騒動があったと噂されたのだから、
もしかしたら、この令和の時代でも…
ここで割って入るきゃさりん

きゃさりん:はいはい、ちゃんと自己紹介をしておきましょうね!
私の名前は「きゃさりん」、まだ見習いの歌人です
そして、後ろでご不満そうな方が「葱太郎さん」、
実はこう見えても腕利きの陰陽師なんです
あと、今こちらには居ないのですが、役行者の「山さん」の3人で
この江戸の町で起こる奇怪な騒動や事件の解決に奔走してるんです!
ただ、残念なことにそんな大変な命がけのお勤めも
お国の非公認という事もあって、なかなかに生活も厳しく…
と、そこへ山さんが現れる

山さん:姉さん、葱が遅いから見に行ってと頼んだのに、
遅いと思って探しに来たら、こんなとこで葱と一緒に油売っていたんかい
きゃさりん:あ!やばっ!
葱太郎さんを呼びに来たんだった
葱太郎:…(苦笑)
山さん:じゃあ、先に行ってるわ

きゃさりん:え?先行っちゃうんですか?
待って下さい!今行きます!
ちょっと、何をボケっとしてるんですか!行きますよ!
葱太郎:え?何か俺のせいみたいになってない?
きゃさりん:喋ってないで急いで!
葱太郎:えーーーーー!!

きゃさりん:あ、そうそう!
『ナニヌの葱太郎』、第一章の第一話の「髪切り」のお話、
はじまります!

ナニヌの葱太郎
<出演>
葱太郎
きゃさりん
山さん
他、多数

第一章 髪切り
[第一話]

Presented By でこぼこ三人衆

さて、今日も今日とて仕事も無く暇を持て余してダラダラとした生活をする葱太郎
まあ、こんな日は突然どっかから事件の一つも起きて大騒ぎにでもなれば、
ここぞとばかりに馳せ参じて見るのも良いのだけど、
それはそれでこの平和な暇なひと時が壊されて嫌なもんな訳で、
いやはや、何とも世の中は矛盾だらけなのかと思ってみたりする
しかし、暇だ…
夕方にはきゃさりんが来ると言っていたから
それまでの時間をどう潰すか悩むな~

と、言っているうちに
気が付けば夕刻、少し外も薄暗くなり始めた時のこと、
そこへ突然、山さんが血相を変えてやってきた
山さん:おい!葱!!
葱太郎:え?ちょっと山さん、何かあったんスか?

山さん:姉さんはここに来てないのか?
葱太郎:いや、まだ来てないけど
でも、もう少ししたら来る予定だけど、どしたの?
良く分からないが、苛立っている様子の山さん

山さん:葱、お前は何も知らないんだな
葱太郎:はぁ、ここ最近は全く家からも出ないで籠ってましたし…
山さん:…
まあ、あんまりのんびりしている場合には思えないが、
ここ最近での江戸での騒動を説明するから良く聞くように!
葱太郎:あ、はい

山さん:これは下谷の小島家の下働きの女性が、朝起きて玄関の戸を開けようとした時の話だ

山さん:非常に頭が重くなり、突然髪の毛が切れて落ちしまったというんだ。
このように髪が切られた場合、本来は粘り気があり、臭いがするものだが、
この時の髪の毛はそうではなかったのだから不思議だと。

山さん:他にも、別の家の下働きの女性は、夕方からしきりに眠気があり、
頭が痛くなったかと思ったら突然髪がバサッと切れて落ちてしまったとか。

山さん:紺屋町の金物屋の下働きの女性が夜、買い物に出たところ、
髪を切られた事に気付かず帰ってきた

山さん:人に指摘されてそれを知ると、驚いてその場で気を失ったとの話も

山さん:そんな事があちらこちらであるもんだから、
巷ではキツネや髪切り、正体不明の怪異、と様々な噂が広まり、
女性の髪を切るという嗜好の者が、
通り魔的に女性の髪を切るという事件も起こっているとも言われ、
町中がパニックになっているんだ
葱太郎:家に籠っていた間にそんなことがあったんっすか
そう言えば、きゃさりんが以前にそんな話をしていたような…

山さん:あ、そうだ!それで姉さんは大丈夫かを確認しに来たんだ
この時間でも来ないのは心配だな
葱太郎:そうかな、どっか寄り道なりしてんじゃないかと
山さん:どうにもお前は能天気過ぎる、万が一もあるし探しに行くぞ
葱太郎:え?今からっすか??

結局、山さんに押し切られて面倒臭そうにきゃさりん探しに出ることに
葱太郎:さっきの話を聞いた後だと、えらく町中が薄暗く感じるもんっすね
山さん:ん?今、何か女性の声みたいのを聞こえなかったか?
葱太郎:いや、特に…
すると、2人の前を何人かの町人が走り去って行く、
それも何か大変な事があったのか、誰もかれもが神妙な面持ちだ
山さん:やはり何かあったな、行くぞ!葱!
葱太郎:あ、はい

町人の向かう方角に着いて行くと、そこには大勢の町人と、
その人だかりの中心には倒れた女性が…
葱太郎:きゃさ…では無いか
灯りを女性に近付け、きゃさりんじゃないことを確認する葱太郎
しかし、その時に葱太郎は大事な事に気付いた
葱太郎:山さん、この女性の髪が切られてますよ
山さん:何だって!

きゃさりん:聞き覚えのある声が聞こえるから来てみたら、
やっぱり山さんと葱太郎さんの二人だったんですね
葱太郎:あれ?きゃさりん
何でここに??
山さん:…
きゃさりん:あ、葱太郎さんとこに向かう途中、家の戸締まりが心配になって
一度家に戻ったので少し遅くなっちゃいまして…
山さん:まあ、無事で何よりだ
きゃさりん:無事って?
ん?
葱太郎:ちょっと、こっち来てきゃさりん

葱太郎:自分と山さんはきゃさりんが遅いから探しに来たの
で、その探す切っ掛けになったのが、最近流行りの髪切り魔の噂で…
(中略)
女性の声が聞こえ、来てみたら女性が倒れてて
きゃさりんかと思ったら、きゃさりんではなく
それどころか、何処からとも無くきゃさりんが現れた
という話
きゃさりん:話の経緯は理解したわ
そして、今のこの状況もね

山さん:話の整理が着いたところでなんだが、ワシはここに残るけど
姉さんと葱は一旦、葱の家に帰っていてくれないか
葱太郎:まあ、元々はその予定だったし、それはそれで構わないけども
山さんは残って何するのさ
山さん:この女性が意識を取り戻したら、何があったかを聞くのと
流石にこの騒ぎを聞きつけて町奉行も動くだろうから
今回の件も含めて色々と思う事もあって、ワシはワシで単独で動かさせて貰うわ
葱太郎:なるほど、そういう事なら了解っス!
さっきの話をきゃさりんにも話しておくので、何かあればいつでも呼んで!
きゃさりん:山さんも気をつけてね!

葱太郎:まあ、つまりはあーで、こーで、そういうことなんだ
葱太郎は家を出る前に聞いた山さんからの話をきゃさりんに話した
正直、男の被害はほぼ無く、大半が女性の被害なのを考えると
今何よりも気を付けるべきはきゃさりんであり、
今こうしている間にも何が起こるかわからないといった心境の葱太郎
きゃさりん:私のタイミングが悪かったのは納得したし、2人は迷惑を…

きゃさりんの言葉を遮るように、葱太郎は取り出した護符をきゃさりんの方向へ投げた
葱太郎:貴様が犯人か!その正体をあらわせ!

すると、きゃさりんの背後の暗闇に護符が貼り付くと、うっすらとした黒い物体が
きゃさりんの後ろから襲わんとばかりに手を伸ばしている様に見えた
葱太郎:きゃさりん、そのまま動かずに!
きゃさりん:…

黒い物体は護符によって封印されそうになるのを避けようと、
闇の中から黒い魔物のような姿をした何かが逃げ出そうとしたのだ
葱太郎:きゃさりん、その場から離れて!

そういうと、葱太郎は頭に被っていた笠を円盤の様に回転させながら
その黒い魔物へ向かって投げた
高速で回転する笠は逃げる黒い魔物に僅かにかすったのか、
魔物は「グワァ!」と声を上げて走って逃げて行った

魔物はアッという間に姿を消した
それは走って逃げて行ったというよりは、パッと消えて居なくなった
という表現の方はしっくりくる消え方だった
葱太郎:今追うにしても、アイツが何者か分からない以上は危険過ぎるかな
きゃさりん:うん、一度これはこれで山さんに報告して
今後の対策を立てるのが懸命かと私も思う
葱太郎:だよね、じゃあ帰るとしますか

その頃、女性の回復をそばで看病をしつつ待っていた山さん
それなりに時間が経ってから、女性は意識を戻した
山さん:おや、意識が戻りましたが?
女性は静かに頷いた

山さんは意識を取り戻した女性から、事の経緯を聞いた
と言っても、やはり噂に行く話と寸分の違いは無く、
たまたま買い物に出たものの、何かの気配を感じたと思ったら
髪の毛が切られた事に気付いた際に感じた恐怖と驚きで
あの場で気を失ったんだそうだ
残念な事に、髪を切ったヤツの姿ははっきりとは見ておらず、
黒い大きな何かに頭から喰われそうになったような…
という話だった
山さん:色々とお話して頂き、ありがとうございました
まだ意識も体調も思わしくないし、外は真夜中で危険だと思うので、
町奉行には自分から話すので、今夜はここに泊めて貰うと良い

町奉行:して、今夜あの女性をここで匿うの事は一向に構わんのだが、
代わりに我々にも今回の騒動の詳しい情報を提供して貰えないか
山さん:さて、話を聞いたとして、それを事実として受け取って頂けるだろうか
もちろん、話す内容には嘘は無い、但し、多少の現実離れした事もある
それも含めて受け入れてくれるならばお話ししましょう
町奉行:こちらとしても不本意ではあるが、ここまで騒動が大きくなると
人の仕業というよりは、人ならざるものの仕業、
それこそ、そなたたちの言う「怪異、妖怪」なんて現実離れした輩の仕業、
そう考えるのもあながち可笑しな話でも無いと思いつつある
山さん:なるほど、それであればお話しましょう
山さんは町奉行に知りうる情報の全て、それと先ほどの騒動の話、
それを踏まえて考えられる犯人像を話した
町奉行:うむ、理解した
今後はお互いに情報交換は密に行っていくとしよう
もしこの先で何か助けが必要な時は言ってくれ、助力致す
山さん:協力的になって頂けるのは助かりますが、
こうも急に態度が変わると申し訳ないが、少し疑ってしまうもので
良かったら理由をお聞かせ願えないでしょうか
町奉行:実は、将軍のお屋敷でもこの怪事件が起きて騒ぎとなった
これ以上の被害は避けたい将軍からは一刻も早く犯人を捕らえ、
この事件を解決するように命じられているのだ
山さん:なるほど、そんな事情があったとは
将軍も心ここに非ずであろう
町奉行:さよう、なのでこの度は実に有意義な情報が得られたので
将軍にも情報を伝えようと思うのだが、宜しいだろうか?
そして、軽く頷くと握手を交わし、山さんは屋敷を出た

その頃、葱太郎の家では…
きゃさりん:そこなんだよね!不思議じゃない?
だって、髪の毛を着られる人たちって、それなりに髪が長いんじゃないの?
それに比べ、私の髪は短いんですよね
葱太郎:言われてみれば、確かにその通りだ
となると、何で襲ってきたんだって話にもなるんじゃないかな
きゃさりん:うーん、それもそうですね…

そんな話をして二人で悩んでいると、山さんが帰ってきた
葱太郎:これはまたなかなかに遅くなりましたね
きゃさりん:さっきの女性は無事なんですか?
山さん:あぁ、女性は無事だ
ただ意識を取り戻すまでに時間がかかってしまい
その上、町奉行に事の顛末を話したりしていたので今になった
遅くなり、すまない
きゃさりん:いえいえ、大丈夫ですよ
葱太郎:そそ、こちらも話が難航してましたしね

先ほどの女性の件、町奉行に関しても二人は山さんの話を聞いて
問題なく理解した
そして、騒動の前後を確認すべく双方の得た情報を改めて共有し合ったが、
そこで大事な話を山さんにしなくてはならない事を二人は思い出した
それは、ついさっきの出来事だ

葱太郎:とっても最新かつ、重要な話があったんです!
というか、忘れていたのでは無く、どう話して良いのかが分からず…
今もまだ頭の中で整理がついて無いんす
(少し間を空けて)
葱太郎:えっと、実は分かれた直後にきゃさりんが自分の目の前で
とても変な黒い物体(霧っぽい闇)に襲われそうになったんっスわ
そして、葱太郎は一連の出来事を極力、こと細かく山さんに話した

山さん:うむ、おおよその理解はしたが、先ずは姉さんが無事で何よりです
きゃさりん:驚く事に当事者の私は全くそれに気付かずでして…
実にお恥ずかしい
山さん:話を聞いて2点ほど気になったことはある
葱太郎:それは何ですか?
山さん:んじゃ、一つずつ説明していこうか
一つ目は、今まで聞いた「髪切り事件」に遭った被害女性は、
切られた分の髪がその場に残されていた、という事
なのに、今回の女性は後ろ髪がバッサリとは無くなってはいたものの、
切られた分の髪は残されていなかった、という事
二つ目は、これがまた重要なんだ
先ほどの被害女性は犯人を良く見ていなかったが、こう言っていたんだ
「黒い大きな何かに頭から喰われそうになったような」
それに対し、姉さんを襲った犯人は葱太郎が言うにはこうだ
「とても変な黒い物体(霧っぽい闇)に」
双方の証言を比較しても、似て非なるもの、つまりは犯人が同一なのか?
という疑問に到達した、という事なんだ

葱太郎:確かに自分もそれは疑問です!
先ほどきゃさりんとも話してましたが、髪が長い女性ばかりが狙われた中、
髪の短いきゃさりんが狙われた理由が見つかりませんでした
それと今の話を聞くと姿が異なる様にも感じます
きゃさりん、一瞬でも犯人の姿を間近で見たと思うんで、
なんとか思い出せ無いかな?
きゃさりん:そう言われてもねぇ~、うーん…
山さん:例えば、何か知っている生物に似ていたとか、人っぽかったとか

かなり記憶を掘り起こしたんだろうか、
きゃさりんが10分近く考えに考えた結果、何かを思い出したようだ
きゃさりん:はい!はい!
薄っすらとした記憶だけど、動物で言えばくちばしが長く「カラス」みたいな感じ
それで、手がはさみのようになっている姿をしていたかも!
葱太郎:え?!それって凄く重要な事じゃない!
なんで今まで忘れてたのさ
きゃさりん:仕方がないでしょ!
こんなにも一日に色々な事が起きたら誰だって頭が追いつかないよ
葱太郎:まあ、そうだけどさぁ

山さん:ありがとう、姉さん
その答えは正解だ
ワシが集めた情報の中に、その風貌の輩に遭遇した話はあった
というか、それが今回の「髪切り事件」の犯人に違いない
きゃさりん:そしたら話がまた戻るけど、私が狙われた理由は?
何かを思いついた葱太郎が話に割って入る
葱太郎:もしかして、きゃさりんを狙ったというよりも、自分らを狙ったとか?
町で女性が被害を受けた際に、犯人もあの場に居たとかで
きゃさりん:え?何か葱太郎さんの推理凄いかも!
そうなると、犯人は人の可能性が高いんじゃないかな?
山さん:確かに葱の話には一理ある
ならば、明日は互いの集めた情報をもとにそれぞれで調査しないか?
葱と姉さんは「髪切り事件」の犯人を「人間」という観点で、
ワシは犯人を「妖怪」という観点で調べるとする
葱太郎:了解!
きゃさりん:了解!

そして、この日はこれで解散し、帰りは安全を考慮し、
山さんがちゃんときゃさりんを送り届けてくれた
さて、問題は明日からの調査だ
しかし、正直言って手掛かりは少ない、いや、無い
頭の中は不安ばかりだが、
それ以上に今日は疲労感がただならない
ふと、知らぬ間に眠りにつく葱太郎だった

次回!
第一章 髪切り 【第二話】


何処か聞いたような、何処かで見たような…
そんな良く知る何かに似ている物語風の怪奇譚ですが、
寛大なお心で少しでもお楽しみ頂ければと思います!
2026.05.01 更新