-第一章 髪切り-
【第二話】

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この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
あくまでも作者の妄想が生み出した「葱太郎」によるフィクションとエンタメ、そして、
個人的な願望を好き勝手に盛り込んで作り上げた日常が舞台のお話です。

もしかしたら、知ったフリして平気で嘘付いている可能性もありますし、
到達しなかった人類の考えを遥かに超越した新たなる心理に触れるかも知れません。
が、何度も良いますが、この物語はフィクションです。大切なので二度言いました。




きゃさりん:こんにちは、きゃさりんです
「髪切り事件」も中編を迎え、物語も大詰めと言っても良いかと思います
ですが、前回の内容をお忘れの方、初めてここから読まれる方たちのために、
私が前回までのあらすじを駆け足でお話します!




夕方に葱太郎さんの家に伺う予定だったんだけど、ちょっと戸締まりが気になって
約束の時間を遅れてしまったのがことの始まりでして…

この時、私の伺い知らぬところでは驚くような事件が発生していたのです




それが今、江戸の町中を賑わしている「髪切り事件」とはいざ知らず、
意気揚々と町人たちが群がっているものだから、私も野次馬根性が掻き立てられ
群集の中を掻き分けて見てみたら、その中心には葱太郎さんと山さんの姿が…

まさか、この時は自分が遅れた事で二人が事件に遭遇したなどとは露知らず
ここで空気の読めない合流を果たしてしまった訳でして
それはもう二人ともご立腹ったらありゃしない…
というか、これって私が悪いんですか?




ちょっと納得が行かない感じであったけど、
葱太郎さんからことの経緯を聞いて状況を理解したら、
流石にちょっとは迷惑をかけた事に反省もしたりしましたよ

どうやら、髪切り事件に私が遭ってないかを心配して探しに出た矢先、
本当に事件の現場に遭遇してしまったという事だったのだからねぇ
まあ、被害にあった女性には申し訳ないけど、私は無事で何よりという事で・・・

と、その時!




急に葱太郎さんが護符を取り出して私の後ろ側へ投げたんだけど、
え?何か居たの??
なんて思っているうちに、後ろを振り返ると怪しい黒い靄が背後に迫って…
何??
え?え?これって??




なんだか良く分からないうちに葱太郎さんと黒い靄の激しい戦いが始まり、
葱太郎さんが笠を飛ばすと、それが当たった黒い靄は走って逃げて行ったというよりは、
パッと消えて居なくなった、のかな?
とりあえずは一難は去ってくれた様子ではあるけど、正直パニック状態な訳でして、
事態は終息してもまだ、正直言って頭の中は「??」って感じ




葱太郎さんの家でひと段落着くと、気持ちも落ち着いて
先ほど何があったかを葱太郎さんから説明されたんだけど、
自身が危険に晒されていた事を再認識し、急に悪寒が走ったりもした

そんな話をして二人で悩んでいると、山さんが帰ってきた

そこで今しがた遭遇した一連の出来事を山さんに説明する葱太郎さん




まあ、それもあって改めてお説教はされたのは置いておくとして、
山さんからは先ほどの被害女性が意識を取り戻したこと、
女性は髪を切ったヤツの姿ははっきりとは見ておらず、
黒い大きな何かに頭から喰われそうになったとか言っていたと

また、駆け付けた町奉行の方とも情報を交換し、
その情報の中には、将軍のお屋敷でもこの怪事件が起きたこと、
その解決を協力して欲しいという話があったことなど




まあ、まあ、そんなこんなで「髪切り事件」に巻き込まれた3人、
果たして江戸を賑わすこの事件を解決することが出来るのか?
そして、犯人の正体は一体何者なのか?

第一章 第二話
始まります!



ナニヌの葱太郎

<出演>

葱太郎

きゃさりん

山さん

他、多数




第一章 髪切り
[第二話]




Presented By でこぼこ三人衆




翌朝、合流した3人は足利将軍の立派な屋敷に訪れた。

きゃさりん:すっごい!流石は将軍様、立派なお屋敷にお住まいで

 葱太郎:ここから門までの敷地だけでもうちの借家より広いっす

山さん:悪いけど、二人とも黙っていてくれないか

そして、静かになる二人




将軍に面会して、将軍にことの経緯を説明する山さん、それを横で大人しく聞く二人

山さん:話しは町奉行の方から聞いていた内容に相違はないようです
そして、昨晩には同様の事件、それこそ一件は未遂ではあるけど、
ここの二人がまさに当事者でした




将軍:して、そなたの見聞ではどのような考えか聞かせてくれないか

山さん:はっきりとは断言は出来ませんが、犯人は妖怪の仕業かもしれないかと

何処か疑念を抱いた表情を浮かべながら、将軍が口を開く

将軍:確かに屋敷の中でも噂になっているが…
ただ、誰かがこの目でみたならば納得も出来ようが、見てもいない、
しかも妖怪などという不確かな存在を信じろと言うのは難しいではないか

葱太郎:いや、信じる信じないの前に、何とかしないと被害は増えるし、
人間が犯人と思うなら、引き続き町奉行に調査と警護をお願いすればよいじゃないの
俺らは俺らで犯人を探すまでだしね

少し悩んで、将軍が口を開く

将軍:お主たちの気持ちはわかった、妖怪が犯人かどうかは別として、
一刻も早く犯人を見つけ出したい気落ちは一緒であるからして
犯人探しには協力をお願いしたいので、
今夜から町の見回りを頼めないものかの

そのお願いに対し快諾した三人は将軍の屋敷を後にした




場所は変わって団子屋にて、
夜の見回りを命じられた3人はどうやって犯人を探し出すかを論じ合う

きゃさりん:というか、これって報酬とか貰えるのかな?

葱太郎:はぁ、そんなの報酬なんてくれないでしょ

きゃさりん:ちょっと待って!一番お金に困ってる人が何を呑気なことを…

言い合いになる二人を制するように間に入る山さん

山さん:ちょっと姉さん、一旦その話は後にしないかい
もちろん、解決の折には報酬は将軍に申し出るからさ

渋々納得した感のあるきゃさ




葱太郎:じゃあ、ちょっと真面目な話をするけど、あの日きゃさりんを襲ったやつ、
あれってやっぱ狐なんじゃないのかな?
一瞬しか見えなかったんで、あれだけど…
その辺り、何か思い出したりはしてないのかな?きゃさりん?

きゃさりん:それが思い返してみたら、ちょっとだけ姿を思い出したんだけど、
何か烏みたい姿、いや鳥っぽくは無いんだけど、顔が烏のように見えたかも

山さん:狐に烏…
いずれも何らかの動物の仕業って事なのかな?




うーん、と考え込み無言の山さん

山さん:先日の被害女性の件で気になっていることがあって、
それが切られた髪の毛がその場には無かったんだ
狐の話には腹を裂いたら髪の毛が出てきたなんて話はあったんだが、
もし烏なんかだったりしたら、あの口で髪を食べるのは難しいと思うんだ

葱太郎:なるほど、そう言えば髪の毛は無かったかも
そうなると、被害は似て非なる二件が存在するってこと?

山さん:その通り!
被害時に切り取られた髪の毛がその場に残されている場合と、
髪の毛が残されていない場合だな

葱太郎:では、きゃさりんを襲ったヤツは「切り取った髪を残す」って方かな
そしたら、鳥の様な風貌であれば納得出来るかも!




きゃさりん:お悩み中のところにすみません!
この柱に貼られてるお札って何ですかね?

葱太郎:え?お札だって?

きゃさりん:うん、実のところ町中でも結構見掛けていたんで気になっていたんです

葱太郎:どれどれ、ちょっと俺に見せて欲しいな




そう言って柱からお札を剥がしてじっくりと観察する葱太郎

葱太郎:全く効果の無いお札って訳じゃないけど、
かといって何の力を持たないお札って訳でもない

山さん:それは一体どういうことが言いたいんだ?

葱太郎:何と言うか、魔除けだとしても妖力を持つ低俗な動物向けって言うのかな?
貉とか狐とか…
うん、ほんとその程度にしか効力は無いと思う




すると、お店の店主が慌てて葱太郎の手からお札を取り上げようとする

店主:ちょっとアンタ!大変な事になったらどうしてくれるんだ
勝手にお札を剝がすんじゃないよ!

葱太郎:いやいや、どんなお札かをちょっと見せて貰っただけじゃんさ

店主:うるさい!うるさい!早くお札を返しなさい!

葱太郎:こんな効果の乏しいお札なんて貼ってても意味無いって…
貉か狐にでも残飯を漁られでもしたんかよ

といった具合にお札を巡って揉める両者




まあまあ、落ち着いてと言って葱と店主の間に割り込み止めに入る山さん

山さん:先ずは葱、お札を店主に返しなさい

葱太郎:はいはい、返しますって

店主:良いか!もう二度とお札に触れんじゃないぞ!
このお札のお蔭で「髪切り虫」から守られてるんだから

そう言って取り返したお札を柱に丁寧に貼り直す店主




山さん:ん?ちょっと今、「髪切り虫」から守られてるっておっしゃいましたか?

店主:あぁ、言ったよ
それが何だって言うんだい

山さん:あの、その話について詳しく教えてくれませんか?
実は我々はその「髪切り虫」、いや「髪切り事件」の犯人を追ってて…

店主:はぁ?




まだ怒りが収まらない雰囲気の店の人だが、仕方がないと半ば不満そうに語り始める様子

店主:ご存知の通り、今や江戸の町の何処もかしくもが「髪切り虫」の噂でいっぱいさ
そんなある日、と言ってもここ最近の話なんだが、
なんでもとある全国を行脚している海の向こうから来たって言う、
とても偉い道士の方がうちの店にやってきて
この「髪切り虫」避けのお札ってのを貼れば大丈夫だって言って
売りつけてきたんだが、もちろん断ったんだ

山さん:まあ、聞くからに胡散臭い話ですし、それは当然かと思います

店主:そしたらその道士ってのが、あっさりと諦めて店を出て行ったかと思ったら、
今度は町中の店や家で売り始めたんだ
まあ、一軒一軒回ったものの、それでも誰も買いやしない

きゃさりん:まあ、そうでしょうね
しかし、そこまでするなんて余計に胡散臭く思えますね

山さん:確かに…




店主:そこでこの道士がとった行動が凄くてな
突然、布袋から一匹の狐の死体を取り出したって訳さ、
それには町中の奴らも何事かって集まり始めてよ

何でも髪切りの被害があった場所で捕らえた狐って事らしくてな
その狐の腹をみんなの前で掻っ捌くと、
なんと!大量の髪が詰まっていたのさ

山さん:前に同じような話を聞いた気がするな…

店主:まあ、道士が言うには一連の騒動はこういった狐の仕業だって話で、
このお札を家の目立つとこに貼れば、狐が人を化かして来ようとも、
家には寄せ付けないってんで町のみんながこぞってお札を買ったって訳よ

きゃさりん:え、こんな話で??
本当に狐の仕業かも分からないのに…

葱太郎:確かにお札には低級霊を寄せ付けない効果くらいはあるけど、
あくまでも狐や貉が化かす程度ならって話だけど
そしたら例の「髪切り虫」の正体は狐や貉って事なのかな?




山さん:さっきの話を聞く限りでは、一番怪しいのは道士と言われる輩だな

葱太郎:最近ということは、まさにこの騒動が起こり始めた頃だろうし、
ちょっとタイミングも良過ぎて怪しいんじゃないかと思うッス

きゃさりん:とは言っても、葱太郎さんも言っていたように、
お札もどうやら狢や狐避けっぽいし、
髪の毛を食べていた狐の話からも話の整合性は合ってるように思えますね

葱太郎:そうなると気になるのは、その場に髪の毛が残されているか、残されていないか...

きゃさりん:髪の毛が残されていないのは、やはり食べてしまったと言う事ですよね?

葱太郎:でもさ〜、どうにも腑に落ちないのは狐が髪の毛を食べるかってとこかな

山さん:うーん...
どうにも真実から目を逸らさせる何かがある気がするんだが
それが何なのか、今ひとつ分からないんだよね

暫しの沈黙が流れ…

山さん:と、やや腑に落ちないが、その札が何かの手掛かりはなりそうだし
これから町中に貼られているお札を確認しながら、何か手掛かりを探さないか?

葱太郎:了解!そうっスね!

きゃさりん:もしかしたら何か手掛かりがあるかも!

そして、町中を見て歩く事にした三人




店を出て歩き出す三人、
改めて町中を見渡すと…、今まで気付かなかったが、
結構な数の家の玄関や柱にお札が貼られていることに気付く

きゃさりん:ここにも、あそこにも…
何処もかしくもお札が貼ってありますね

山さん:…

葱太郎:まだ探します?

山さん:そうだな、今日はここまでにするか
しかし、あれからパタリと「髪切り事件」もなりを潜めたもんだから
意味のある事か微妙ではあるが、明日から夜回りをはじめるとしょう

頷く葱太郎ときゃさりん
そして、それぞれの帰路に




翌日の日中も懲りずに手掛かりを探したのだが、
結局はあれ以上の情報が得られることも無く、この日は夜を迎えた

葱太郎:何処もかしこも貼られてるのを見ると、もうこの町は全て貼られてるのかも
一軒当たり、一枚買ったとして、それを町中の家の数で計算したら…

きゃさりん:間違いなくぼろ儲けしてると思う、
この程度のお札ならば、葱太郎さんでも作れるんですよね?

葱太郎:まあ、それは訳ないことだけど…
そんなインチキ臭い商売を始めて設けてもなぁ~

きゃさりん:本当にお金に葱太郎さんは関心が無いんですね
これが私なら絶対に上手い商売に繋げてみせますよ!

山さん:そう言えば、今日の昼間に聞いた話なんだけどさ
「髪切虫」の災いから逃れるためには、
「異国より悪魔の風の 吹きくるにそこ吹き戻せ伊勢の神風」という歌を門口に貼ったり、
簪に巻き付けたりすれば良いと言われたが、
このまじないは一般には広まらなかったって言うんだわ

葱太郎:そうそう!それ!
しかし、まじないが広まらず、お札は広まったのだから、
そこには何らかの理由があるんだろうね

きゃさりん:例えば、誰かが…
そう、その道士が裏で糸を引いていたりは無いのかな?
おまじないも「異国より」なんて歌に入っているし、
あの道士も海の向こうの国から来たって言うしさ

葱太郎:またそこに行きつくか…
どうにもその道士ってのが怪しいよな

山さん:そこで二人には、明日も引き続き「髪切り虫」の調査を進めて欲しい
あと、ワシはちょっと気になる事があるから、また夜に合流することにしよう

二人は山さんが何を気にしているかも気になったが、
とりあえずは了解し、今日のところは解散して各々の家に帰ることにした




それから数日が経過したある日のこと、特に髪切りの事件も無く、その後の道士の所在も掴めず、
結局は山さんの気になる事ってのも聞きそびれてしまって何の事か知る由もなく、
打つ手もなく燻っている葱ときゃさは蕎麦屋で時間を過ごしていた

葱太郎:何か最近は「髪切り虫」の噂も、「髪切り事件」も起きず、調査も行き詰ってしまったなぁ

きゃさりん:そうですね、本当にお札の効果だったりするのかも気になります

葱太郎:そこでだけど!まあ、個人的には行きたくは無いんだけど…
前に行った団子屋に行って、お札を何処で手に入れる事が出来るかを聞いてみては?と思うんだ




きゃさりん:なるほど!確かにそれは名案かもです!
直接、その道士にも会っていると思うし、あの時には聞きそびれた
道士の風貌とか情報を得ることは出来そうですし

葱太郎:ただ、この間の件もあって教えてくれるかどうか…
めちゃくちゃキレてたしなぁ

きゃさりん:そしたら、私が聞きますよ!
こう言っちゃ何ですが、そう言うのは得なんで

葱太郎:お~!そう言ってくれると助かるっス!

きゃさりん:あと、山さんから聞いた話なんだけど…
数日前に気になる事があるって言っていたじゃないですか、
あれ、そう言えばこんな事を言っていたのを思い出したんです




葱太郎:え?何々??
てか、それって忘れてちゃダメな話なんじゃ…

きゃさりん:まあ、まあまあ、そこは大目に見て下さいましって事で!

葱太郎:はぁ、思い出したらな良いけど…

きゃさりん:将軍のお屋敷で起こった騒動の話を覚えてますか?
あの時、被害に遭った女中さんにお話を聞いたそうで、
そこで得た情報が「髪の毛を食べられた」って事なんだそうです

葱太郎:「髪の毛を食べられた」って事、ん?と言うかさ、
そういう事であれば、きゃさりんの件、その前の件、
それらはどっちかと言えば「髪の毛を切られた」って事だよね!

きゃさりん:まあ、そういう言い方でもあるかな?

葱太郎:なるほど、つまりは「髪の毛が残されていた」と「髪の毛が残されていない」という事は、
「髪の毛を切られた」と「髪の毛を喰われた」って事でもあるって事か!
これは大きな発見だぞ!

きゃさりん:うん、たぶん山さんも同じ考えに到達したんじゃないかと思う
あ、そうそう!もう一つ!

葱太郎:ん?まだ何かあるの?

きゃさりん:夕方に山さんと落ち合う約束してたんだよね

葱太郎:えー!じゃあ、急がないと時間が無いじゃん!
ほんと、勘弁してよ~

そして、蕎麦屋を出た二人は、再び団子屋を訪れた
しかし、この間の店主は不在だった




この日は売り子の女性しかいないらしい
そこで、二人は女性にお札を売りにきた道士について、知っている事が無いかを尋ねた

女性:そうですね…
お歳はそれなりにお歳を召した男性で、黒い長髪で髭を生やしてました

きゃさりん:うん、この辺は想像通りですね
会った時の印象とかどうでしたか?

女性:印象ですか、その時は店主に頼まれてお札を買いに行ったので、
少しだけお会いした程度で、少し怖い感じって言うんですか、
ボロボロの服を来ていたのもあってそう感じました

葱太郎:ちょっと待って下だい!
今、買いに行ったと言いましたか?
それって何処にですか?




女性:うちの場合は、一度お札の購入を断ってるんで、あとで道士の元で購入したので
たぶんですが、そこが道士の家か宿泊先なのではと…
詳しくは分かりませんが、その場所であれば覚えてます

きゃさりん:本当ですか!
良かったら、その場所を教えて下さい!

女性:構いませんけど、そんなのを聞いてどうするんですか?

きゃさりん:もちろん、自分たちもお札を購入したくて探していたので
まだ買いに行けるのであれば助かるなぁ~って

女性:なるほど、そうであればお力になれて良かったです

道士が居るであろう場所が分かった
その場所はここから少し離れた所であるが、ほぼ一本道なので分かり易い

気が付けば夕暮れとなっていた




そして、約束の時間に山さんと合流した

山さん:やあ、急に呼び出してしまって悪いね
姉さんには話をしたんだけど、葱太郎はもう聞いてるかな?

葱太郎:うん、聞きましたよ
ついさっきですが…

山さん:あれ?だいぶ前に話した筈なんだけどなぁ

きゃさりん:それよりも、何か新しい情報でも仕入れたんですか?
こう言っては何ですが、こちらはとっておきの情報があります!

山さん:そうなんだ、それは自分が仕入れた情報は大したことないかもね

山さんが仕入れた情報はこうだった
一つは例の「髪を喰われた」という話の補足のような話で、
女中が何とか思い出して、その風貌が熊のような真っ黒く大きな生物だったと
そして、もう一つは道士のこと、
将軍の屋敷での一件もこの道士が絡んでいたって話だった

こちらも道士を疑い、何とかアジトと思われる場所が分かった話、
逃げられる前にこれから乗り込む事を提案した




山さん:乗り込むのは良いとして、その場所って何処になるんだい

きゃさりん:あの真っすぐ行ったところにある屋敷がそうらしいです
団子屋さんで聞いたので間違いは無いはずです!

山さん:え!偶然とは言え、待ち合わせ場所からこんなに近いとは…
姉さん、これは大手柄だよ!流石ですな

きゃさりんが指さす先には一件のそこそこ大きな屋敷があった





三人が近付いて屋敷の周りの様子を入念に探るも人気は無く、
そして、人が住んでいるとしても古くてボロい印象だ

葱太郎:そう言えば、ここにはお札は貼られてないね

きゃさりん:確かに!

山さん:まあ、本人の家と考えたら貼ってないのは不思議ではない、
これは道士の家で間違いないってことではないかな

葱太郎:じゃあ、早速乗り込みますか!

山さん:ちょっと待て!葱太郎!
もう一つ、実は不安要素があるんだ、それが何かって言うと
あまりにもあっさりと家が分かるってのはさ
逆に我々が上手く誘導されているって事じゃないかな?

きゃさりん:えー!そんなことあるんですか??
とても団子屋の女性がグルには見えなかったし…

葱太郎:グルではないでしょ
でも、考えてみたら自分もそうだけど、
多少の心得のある人間ならば、お札が気になる筈で
そしたら、必然的に何処の誰がって話にはなるんじゃないかな

山さん:まさにそれ!
つまりは、今まさに敵の罠の中に自分たちは飛び込む、
もっと言えば中で待ち構えているかも知れない

少しの時間、沈黙が続いた

葱太郎:まあ、罠であれ何であれ、行かない事にはね
何も解決しないのは確かなんで

きゃさりん:うんうん!
ここは躊躇せずに行くしかないかと!

一応、何があるか分からないし、危険性が高いことは否めない
それを踏まえて先頭を山さん、
その後ろに自分、きゃさりんが並んで歩く、
そんな立ち位置のフォーメーションで行くことに




きゃさりん:しかし、とても人が住んでいるとは思えない不気味な家ですね
玄関の鍵も開いていたし…

葱太郎:うん、そうだね

きゃさりん:やっぱりこれって罠なのかな?
葱太郎さんはどう思いますか?

葱太郎:どうだろうね

きゃさりん:ちょっと~、ちゃんと聞いてます?

葱太郎:あのさ、静かに出来ないかな
罠だったら、相手に自分らの存在がばれちゃうしさ

きゃさりん:まあ、そうですが…
でも、こんな薄気味悪いとこで無言なんて怖すぎですよ

静かにしてって言っても
良く喋るきゃさりん

もはや相手にせず、ただ前への注意に集中する葱太郎




ん?急に静かになったぞ??
と思って隣を見ると…
あれ?きゃさりんが居ない!

葱太郎:(小声で)おーい、きゃさりん?

どうにも応答が無い




葱太郎:ちょっと山さん!きゃさりんが居なくな…
うわっ!何だ??

前を歩く山さんを呼び止めようとした、
その時!
葱太郎の何ものかが背後から襲ってきたのだ




完全に押し倒されて体の自由を封じられた葱
振り返り、状況を把握した山さん

山さん:ん?どうした?
おい!お前、何者だ??

葱太郎:すみません…、油断しました…




山さん:ちょいと待って、今助けてやる

そう言うと、すぐさま錫杖に法力を込める山さん




道士:いやいや、邪魔されては困りますね
貴方の相手は私がしてあげましょう

すると物陰から道士が現れ、同じく呪文の詠唱を始め
それを阻止しようとする

山さん:何?他にもいる?

葱太郎:山さん、自分は自力で何とかするんでそっちに専念して下さい!

山さん:悪いがそうさせて貰う事にするよ




山さんの法力と道士の呪文が激突する

山さん:その程度の法力ではワシを倒すなど不可!

道士:ぐはっ!私の法力が劣ってるだと…




山さん:残念な事だが、そういう事だ

道士を壁に叩きつける




あっさりとした決着だった
ゆっくりと道士に近寄る山さん

山さん:もう勝負は着いた
これ以上はどうあがいても仕方がないだろう

道士:…

山さん:さあ、全てを話して自らの罪を償うが良い

道士:そうだな、その通りだ
ちょっと一人では立てないんで、手を貸してくれないか…

道士に近付き、手を貸そうとした
その時!




道士:馬鹿が!引っ掛かりやがったな!!

山さん:なんだと!

しかし、それは罠で
山さんが近付くと隠し持った剣で襲ってきた




それを間一髪で山さんが避けると
道士は落ちていた提灯を拾い、それを山さんの後の部屋へ投げた

山さん:ん?何処に投げてるんだ?

道士:フハハハハハ!
本当の狙いはこっちなのさ!よ~く見てみろ!


4

山さん:姉さん!

障子が燃え落ちると、部屋の中にはきゃさりんが

道士:さあ、どうするよ
あの女をこのまま見殺しにするのか、
それとも助けに行くのか…

きゃさりん、絶体絶命のピンチ!


次回!

第一章 髪切り 【第三話】









何処か聞いたような、何処かで見たような…
そんな良く知る何かに似ている物語風の怪奇譚ですが、
寛大なお心で少しでもお楽しみ頂ければと思います!

2026.06.05 更新




更新日付  更新内容 
2026.05.01 第一章 髪切り 【第一話】を公開
2026.06.05 第一章 髪切り 【第二話】を公開
   
   








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