でこぼこ三人衆 Presents





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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
夏の夜というのは、不思議とあちら側の世界との境界線が、
どうやら薄くなるようでございます。

ふとした瞬間に感じる、生ぬるい風。
誰もいない筈の背後に漂う、気配。

それは気のせいか、それとも…

今宵お届けするのは、その昔より代々伝承されてきた、
少しばかり、怖い物語。

せっかくなので雰囲気も大切と思いますので、
部屋の明かりを少し落とし、耳を澄ませてお聞きください。

さあ、恐怖の時間の始まりです…



- 第9話 浅茅ヶ原の鬼婆 -

これは昔々、東京都は台東区に伝わるお話です。




かつて浅草・浅茅ヶ原(現在の花川戸周辺)の一軒家に、
老婆と若い娘が住んでいました。




老婆は夜に泊まる旅人を石枕で叩き殺し、
金品や衣裳を奪っていました。




ある日、一人の若者がこの宿に泊りにやって来た。




若者の世話をする中で、誠実な若者に対し、娘は恋心を芽生えさせ、
やがて二人はあっという間に恋仲となった。




しかし、日暮れと共に、このままでは老婆に若者が殺されてしまう、
娘は一人、刻一刻と迫る時間の中、悩みに悩み抜いた




その不安と恐怖に意を決した娘は、
何も言わず、若者の身を案じてこっそりと宿から逃がしたのだった




そして、夜となり、娘は若者の身代わりとして寝床に入り、
掛け布団で全身を覆い、就寝したかの様に寝たふりをした




完全に若者が寝入ったであろう時間になると、
何も知らない老婆はいつものように重い枕石を両手で持ち、
若者が寝ている筈の寝床へ静かに向かう。




寝息を聞き、熟睡していると確認した老婆は、
頭部と思われる位置に枕石を一度、二度、と幾度も力いっぱいに振り落とした




寝息も止まり、静かになったところで、布団をはいで確認する老婆、
そこに血まみれになって死んでいたのは若者では無く、娘だった。




自分のした事に気付いた老婆は、この状況に絶望し号泣した




号泣を終えると、しばし茫然自失となったが、
大声で絶叫すると、老婆は家から飛び出したのだった。




池に向かって身を投じ、そのまま沈んでいく老婆…




朝を向かえ、老婆の姿は姥ヶ池へ消えていったとさ。


さて、この話に登場した姥ヶ池なる史跡と、その現在の状況について
少しばかり紹介したいと思います。




舞台となった姥ヶ池は、台東区花川戸公園の端に位置し、
かつて隅田川へと通じていた大池の名残をとどめています。

明治24年に池が埋め立てられた後も伝説は語り継がれ、
園内には「姥が池跡」の碑や人工の池が整備されています。




浅草寺の本堂などには、
この「一ツ家」の伝説を描いた大きな絵馬も奉納されています。

もし機会があれば、浅草寺から徒歩でも行ける距離なので、
浅草観光を兼ねて是非、足を運んでみてはどうでしょうか




ということで、「浅茅ヶ原の鬼婆」というお話でした。

さて、この「浅茅ヶ原の鬼婆」のお話ですが、
浅茅ヶ原という寂れた荒野で、旅人を殺して生計を立てていた老婆の姿には、
当時の貧しさや生きることへの執念、
そして一度手を染めたら抜け出せない犯罪の泥沼を感じました。

最初は生きるためだったのかもしれませんが、殺害を重ねるうちに、
彼女の心は完全に麻痺し、文字通りの「鬼」に変貌してしまったのだと思います。

しかし、血まみれの布団の中にいたのが愛する娘だと知った瞬間、
老婆はただの崩れ落ちる母親に戻ります。

この「鬼としての狂気」と「母親としての人間味」のギャップこそが、
この一ツ家伝説をただの怪談で終わらせず、
現代の犯罪心理にも通じるリアルな恐怖へと昇華させているのだと感じました。


最後まで、お付き合い頂き、ありがとうございました!





民話伝承999🄫