
でこぼこ三人衆 Presents

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
夏の夜というのは、不思議とあちら側の世界との境界線が、
どうやら薄くなるようでございます。
ふとした瞬間に感じる、生ぬるい風。
誰もいない筈の背後に漂う、気配。
それは気のせいか、それとも…
今宵お届けするのは、その昔より代々伝承されてきた、
少しばかり、怖い物語。
せっかくなので雰囲気も大切と思いますので、
部屋の明かりを少し落とし、耳を澄ませてお聞きください。
さあ、恐怖の時間の始まりです…

- 第6話 掘兼の井 -
これは昔々、東京都は新宿区に伝わるお話です。

先日に紹介したさねかずらと小野三佐吾の悲しい恋の話の舞台となった
「逢瀬坂」を降りたところに、『掘兼の井』という井戸がある。
戦時中はポンプを付けて水を汲み上げていたが、
空襲後は使っていない。
「掘兼の井」という名は他の土地にも残っており、
井戸を掘ってもなかなか水が出ないので、
皆が苦労してやっと掘った井戸という場合に付けた名である。
市谷船河原町の井戸もそうだったのであろう。
そこで次のような話が生まれた

むかし、妻に先立たれた男がおり、子どもとふたりで暮らしていた。

しかし、何かと不便なので後妻を迎えることになった。
この後妻が、まま子であるこの男の子を酷くいじめた

初めは、後妻の言う事を信じなかった男も、
いつしか自分の実の子なのに疑いを持つようになり、
ときには厳しくせっかんするようになった

意地悪な後妻は、男の子が父親にせっかんされるのを、
薄笑いをしながら眺めていた
男の子は決して悪い悪戯をしたのではなかったが、
後妻の告げ口で男は子どもの姿を見ると叱ってばかりいた

そのうち、男は子どもが遊ぶ暇があるからだと考え、
庭先に井戸を掘ることをきつく命じた
男の子は父親の命令なので素直に従って毎日、
朝から晩まで井戸を掘った
ろくな道具とないのに固い土を子どもの手で掘るのであるから、
掘っても掘っても水が出るどころか作業はさっぱり進まなかった

後妻である継母は、子どもが怠けないかと監視を続け
食べ物も僅かしかやらないで、意地悪く子どもを叱り続けた

それでも子どもは悔しさを胸におさめて水が出るまで掘りに掘った。
しかし、昨日も今日も水が出てこない

とうとう男の子は根がつき、痩せ細って死んでしまった

土地の人は、この話に、非情な男と継母を憎み、
命を落としてまで井戸を掘った男の子を憐れみ、
いつしかこの井戸を「掘兼の井」と呼ぶようになったとさ

ということで、「掘兼の井」というお話でした。
この「掘兼の井」の名前の由来ですが、
「掘っても掘っても水が出にくい(掘り難い、堀兼ねる)」
という過酷な作業の意味が、そのまま少年の悲劇と重なってます
ただ、今回の話ではこのような怖い話になりますが、
全国各地に「掘兼の井」はあり、
きっと、それぞれに同じようなエピソードが
多少の違いはあれど存在するのかも知れません
もし気になるようであれば調べてみるのもまた
良いかも知れませんね
最後まで、お付き合い頂き、ありがとうございました!
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民話伝承999🄫