
でこぼこ三人衆 Presents

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
夏の夜というのは、不思議とあちら側の世界との境界線が、
どうやら薄くなるようでございます。
ふとした瞬間に感じる、生ぬるい風。
誰もいない筈の背後に漂う、気配。
それは気のせいか、それとも…
今宵お届けするのは、その昔より代々伝承されてきた、
少しばかり、怖い物語。
せっかくなので雰囲気も大切と思いますので、
部屋の明かりを少し落とし、耳を澄ませてお聞きください。
さあ、恐怖の時間の始まりです…

- 第5話 大あかえい -
これは昔々、東京都は江東区に伝わるお話です。

明治37年というから、丁度今から八十年ほど前、
私の母方の親戚に八百二という、当時30歳くらいの写真の男がいた。
この男は東京湾へ行って魚を取るのが好きで、ある秋口の晩、
友人二人を誘って「夜づき」に出かけた

目指す場所へ着くと八百二たちは、カンテラの小さな灯を目印にして
あちこちへ散らばり、海の底を突き始めた
雨もよいの星ひとつない真っ暗な夜で、
文目もわかぬ空に五位鷲がゲッゲッと不気味な声で鳴いて行った。
だが、八百二たちはそんな声には慣れっこになっていたので、
耳にもかけず、ひたすら突いた。

こうして一時間ばかり経ったかと思う頃、
機械的に突き立てた彼の銛にただならぬ手応えがあった
彼はハッとして全身の力で銛をおさえた。
ちょっとでも力をゆるめると刎ね飛ばされそうであった。

彼はとっさに海蛇を突いたと思った。
それで、急に怖さが心底からこみあげてきて、
遠くにチラチラ見える仲間のカンテラに向かって必死に助けを呼んだ
海蛇が東京湾にいるはずもないのだが、昔は海蛇をこわがった。
小名木川で泳いでいても、誰かが「海蛇だ!」とどなると、
子供らは先を争って土手に逃げあがったものだ
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だが、恐怖に上ずった声はなかなか仲間の耳にとどかない。
それは果てしなく長い時間だったように思われた。
ようやく仲間が彼の声を聞き付けて、何事かと急いで舟を漕ぎ寄せて来た
そして、事情を聴くと、例の銛を中心に舟を三角に繋ぎ合わせて、
かわるがわる銛を押し続けた
秋口と言っても夜の海は寒い。
それに海蛇かと思う恐怖が手伝って、三人は全身が震え、
歯の根も合わぬくらいであった

やがて未知の生物も弱ったのか、それとも銛を抑えているのに慣れたのか、
少し気持ちが落ち着いてきた。
それで、いつものように用意してきた一升徳利のことを思い出し、
替りあって冷酒をあおって元気をつけた
こんな時、一人が「さっき来るとき、お初の人魂を見たっけなあ」と言い出した
人魂の噂はもう十何年も前のことだったので、
三人とも見た時はあまり気に留めなかったが、そう言われると、
ゾッとするような不吉なものを感じるのであった

そのうちに、ようやく空が白み初めて、漁師の船が二、三杯遠くに見えた。
三人は天の助けとばかり声の限りに呼んだ
そして、漁師が船を漕ぎ寄せてくると事情を話した

やはり餅は餅屋で、漁師たちは話の模様から下の怪物の正体(巨大なあかえい)をさとり、
上手にその息の根を留めて、八百二の船に引き揚げた
それは畳半帖敷きもある大きなあかえいであった
八百二の銛は尻尾の付け根を突いていたそうだ。
えいは尻尾の力がとても強いから、もし他のところを突いていたら、
こんな大きなあかえいだから、舟をひっくりかえされ、
今頃はお陀仏になっていたろうと言う話。
八百二は改めて怖気をふるった。

三人はもう足腰が立たないほど疲れ切っていたが、
力を合わせて必死に舟を漕ぎ、ようやく自分の村の河岸まで辿り着いて、
皆で土手にこの大きなあかえいを土手に引き揚げた
母の話では、まるで死人をあげるような騒ぎであったそうだ。

それかあらぬか、疲れ切っていた八百二は土手へ上がるとき、
腐った古い土留めの堰板の杭の五寸釘に向う脛を引っ掛けて大きく裂き、
それが元で破傷風をおこしえ、十日ばかり苦しんで寝込んだ
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お初の人魂を見た祟りだと、みんなは信じて疑わなかった。
大あかえいは切り分けで村中に配ったが、
大味でうまくなかったと母はいっていた

ということで、「大あかえい」というお話でした。
果たして十何年も前の祟りによって、八百二は殺されてしまったのか?
だとしたら、話の中ではあまり語られてはいない「お初」と「八百二」は
どんな関係にあったのか?
特にお初の死に、八百二が大きく関わっていたのであれば、
なるほど、祟りだな。これは。
なんて納得も行くものなんだけどね
きっと何かあったんでしょう!
という事で…
最後まで、お付き合い頂き、ありがとうございました!
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民話伝承999🄫