
でこぼこ三人衆 Presents

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寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。
夏の夜というのは、不思議とあちら側の世界との境界線が、
どうやら薄くなるようでございます。
ふとした瞬間に感じる、生ぬるい風。
誰もいない筈の背後に漂う、気配。
それは気のせいか、それとも…
今宵お届けするのは、その昔より代々伝承されてきた、
少しばかり、怖い物語。
せっかくなので雰囲気も大切と思いますので、
部屋の明かりを少し落とし、耳を澄ませてお聞きください。
さあ、恐怖の時間の始まりです…

- 第3話 かきつばた -
これは昔々、長野県の諏訪市と下諏訪町にまたがった八島湿原に伝わるお話です。

大昔のお話です。
霧ケ峰高原の八島に、磨き上げたようなきれいな池がありました。

池の中には、そこここに大きな島、小さい島がいくつも浮いていました。
池の北側の谷間に、ひとりの少女が住んでおりました。

名前を「かきつばた」といいました。
「かきつばた」の美しいことといったら、言葉に言いようがありません。

池のまわりに咲き乱れている、沢山の花の美しさを、
みんな寄せ集めたような美しさで、見る者をうっとりさせています。

「かきつばた」は、昨日はこの赤い花が咲いたわ、今日はあの紫の花が開いたわと、
毎日毎日池のほとりに咲いていく花を、楽しみに眺めていました。

池の南側の尾根に、一人の若者が住んでいました。
名前を「山彦」と言いました。
山彦は体ががっちりしていて、太い眉を持ち、
きりっと引き締まった口元など、見るからに逞しい若者でした。

山彦は来る日も来る日も、広い霧ケ峰の高原を、
鹿のように駆け巡って狩をしていました。
ある日のことでした。

その日は、父色をした濃い霧が池も高原も山もすっかり隠してしまった。

かきつばたは、今日も花を眺めに、
池のほとりのジメジメしたところを南へゆっくり歩いていました。
ちょうどそのころ、山彦も獲物を求めて、
池の近くを北へ急いでいました。
二人が池のほとりの中ほどへ来たところでした。
父色の濃い霧がぽっかり割れて、
緑の絨毯を敷いたような八島の高原、
青い空のような池の水、
やさしくほほえんでいる車山が開けました。

かきつばたと山彦は、ぱったりとはじめて会い、
お互いに驚きの声をあげました。
かきつばたは、りっぱな若者山彦を、
山彦は美しい少女のかきつばたを
ひと目見てお互いに好きになりました。

少女と若者は、すぐに打ち解けてあれこれと語り合いました。
そして、「あなたはなんと男らしく立派な方でしょう。」
かきつばたは、優しく言いました。
「私が立派だって。いやいや、貴方こそ何て美しい方でしょう。」
山彦は赤くなって言いました。
でも、二人とも、
まだ、本当の自分の姿を見たことがないのに気が付きました。

それではというので、自分の姿を池の水にうつして見ることにしました。
かきつばたと若者は、池の中の小さな島に、飛び移りました。
そして、まず、山彦が恐る恐る池の表に顔を出しました。
その時、ちょうど車山の方から、さっと風が吹いて来ました。

池にさざ波がたって、山彦の顔はギザギザになり、
恐ろしい顔に映りました。
「あ。なんてひどい顔でしょう。りっぱだなんてとんでもない。
うそだ、うそだ。」
若者は、がっかりしました。

今度は、かきつばたが、池に姿を映しました。
その時は、風が少しもなく、池は鏡のようでした。
「あっ」
はじめて見た自分の姿、何て美しいのでしょう・・・。

かきつばたはあまりの美しさに驚きました。
そしてじっと見入ったままです。
「かきつばたさん。かきつばたさん。」
山彦が、いくら呼び掛けても返事をしません。
美しい自分の姿にいつまでも見とれているのです。

その内に、不思議な事がおこり、かきつばたは緑の茎になり、
葉になり、顔はしたたり落ちるような、紫の花になり、
かきつばたの花の姿に変わってしまったのです。
かきつばたの花は、もう前の少女、
かきつばたにはかえりませんでした。

山彦は悲しみました。
車山をどんどん駆け上って、大岩の上から谷をめがけて飛び込みました。
そして、行方が分からなくなってしまったそうです。

今も、かきつばたの花は、
八島の池のほとりのあちらこちらに紫の美しさを飾っています。
また、車山の頂に登って耳を澄ませば、
谷の下の方から吹き上げてくる風が、
何かしら「かきつばた」を呼ぶ、
山彦の悲しい声に聞こえてくるそうです。

ということで、「かきつばた」というお話でした。
自分はこの話を読んで(正諏訪の博物館で見て)知った際に、
流石にこの終わり方は無いんじゃないか?と思ったんですね
そう思いませんか?かきつばた、ヤバ過ぎでしょ!って
自意識過剰にも程があるんじゃないかな
と、違う意味でかきつばたを怖いと思いました
そこで、あまりにもしっくりこないので、調べてみました
そしたらですね、二人が出会い、恋に落ちた後、
話の中でも出てきた「父色をした濃い霧」に阻まれてしまい、
二人は二度と再開することが出来ず、
かきつばたは恋焦がれて息を引き取ってしまうんだとか
で、その息を引き取った場所に咲いた紫色の花、
それが「カキツバタ」の花であり、
かきつばたの事を呼び続けた山彦の声が
「やまびこ」になったのだとか…
果たしてどちらの終わり方が好ましいかは
こちらを読んだ方の好みお任せするとして、
今回のお話はこれにて終わりとしたいと思います。
最後まで、お付き合い頂き、ありがとうございました!
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民話伝承999🄫